高齢者の転倒予防を考えるとき、玄関や浴室、階段などに目が向きやすい一方で、見落とされやすいのが「廊下」です。
廊下は一見すると危険が少ないように感じますが、高齢者にとっては、寝室からトイレへ移動したり、リビングから玄関へ向かったりするなど、日常生活の中で何度も利用する場所です。
特に夜間は、暗い中で歩くことによって段差や障害物に気づきにくくなり、転倒につながることがあります。
また、歩行能力が低下している方の場合、長い廊下を歩くこと自体が負担となり、途中でバランスを崩すこともあります。
この記事では、高齢者が廊下で転倒しやすい原因から、手すり・照明・段差・床面などの具体的な対策、介護保険を利用した住宅改修について詳しく解説します。
高齢者が廊下で転倒しやすい理由
廊下での転倒には、さまざまな原因があります。
「何も置いていないから安全」とは限りません。
小さな段差につまずく
高齢になると、歩行時に足が十分に上がらなくなることがあります。
そのため、若い人なら問題なくまたげるような小さな段差でも、つまずいてしまうことがあります。
特に注意したいのが、
- 部屋と廊下の境目
- 敷居
- 引き戸のレール
- 床材の段差
- マットの端
などです。
数センチ程度の段差でも、歩行能力が低下している方にとっては転倒要因になることがあります。
夜間の移動
高齢者の生活では、夜間に廊下を歩く機会があります。
特に多いのが、
「寝室からトイレへ行く」
という移動です。
夜中に目が覚めた直後は、身体が十分に動かないことがあります。
さらに、照明をつけずに暗い廊下を歩くと、
- 段差が見えない
- 障害物に気づかない
- 足元が不安定になる
などの危険があります。
そのため、廊下の転倒対策では夜間の環境を確認することが非常に重要です。
歩行中にバランスを崩す
高齢者では、加齢に伴って筋力やバランス能力が低下することがあります。
また、
- 杖を使用している
- 歩行器を使用している
- 下肢に痛みがある
- 麻痺がある
- 疲れやすい
といった方では、廊下を歩くこと自体が大きな負担になる場合があります。
このような場合には、必要に応じて手すりなどの支持物を設置することで、歩行を安定させられる可能性があります。
廊下の転倒を防ぐ7つの対策
廊下に手すりを設置する
歩行が不安定な高齢者にとって、廊下の手すりは重要な支えになります。
手すりがあることで、
- 歩行中のバランス保持
- 方向転換
- 立ち止まるときの支え
- 疲れたときの身体の支持
などに利用できます。
ただし、すべての高齢者に廊下の手すりが必要というわけではありません。
「本人がどこで不安定になっているか」を確認したうえで設置することが大切です。
手すりは「歩く場所」に合わせて設置する
廊下の手すりは、単純に壁が空いている場所に設置すればいいわけではありません。
例えば、
寝室 → 廊下 → トイレ
という生活動線がある場合、実際に本人が歩くルートを確認する必要があります。
手すりを設置したことで、
- ドアが開けにくくなった
- スイッチが使いにくくなった
- 家具との間隔が狭くなった
ということが起こらないよう注意しましょう。
廊下の段差をなくす
廊下の転倒対策では、段差の確認も重要です。
特に、
- 敷居
- 部屋の出入口
- トイレ入口
- 脱衣所との境目
などを確認しましょう。
段差を解消する方法として、住宅改修による床の段差解消などが検討できる場合があります。
ただし、段差をなくすために新たな段差や傾斜ができる場合もあるため、改修後の動線まで考えることが重要です。
床に物を置かない
廊下に物を置くと、歩行スペースが狭くなります。
例えば、
- 段ボール
- 掃除用品
- 荷物
- 植木鉢
- 小型家具
などです。
特に杖や歩行器を使用している方の場合、歩行スペースが狭いと方向転換が難しくなります。
廊下はできるだけ、
「歩くためのスペース」
として確保しましょう。
マットやカーペットに注意する
廊下にマットやカーペットを敷いている家庭では、端がめくれていないか確認しましょう。
マット自体が滑ったり、端につまずいたりする可能性があります。
「滑り止めがあるから安全」とは限らず、実際に歩いたときにズレたり、段差ができたりしないか確認することが重要です。
必要性の低いマットは、思い切って撤去することも転倒予防になります。
夜間照明を設置する
廊下の転倒対策では、照明も非常に重要です。
特に寝室からトイレまでの動線は、夜間でも安全に歩けるようにしておきましょう。
おすすめなのが、
- 足元灯
- 人感センサーライト
- 常夜灯
- 廊下の照明
などです。
人感センサー付きの照明であれば、スイッチを探す必要がなく、夜間の移動時にも足元を照らすことができます。
家具の配置を見直す
廊下だけでなく、廊下につながる場所の家具配置も確認しましょう。
例えば、
- 廊下に出た直後に家具がある
- ドアを開けた先に物がある
- 廊下の角が狭い
- 曲がる場所に物が置いてある
といった環境では、方向転換の際に身体をぶつけたり、バランスを崩したりする可能性があります。
廊下の手すりはどんな人におすすめ?
廊下の手すりは、特に以下のような方に向いています。
- 歩行が不安定
- 杖を使用している
- 下肢筋力が低下している
- バランス能力が低下している
- 廊下で壁に手をついて歩くことがある
- 歩行中にふらつく
- 転倒歴がある
- 長距離を歩くと疲れる
特に、
「すでに壁や家具に手をつきながら歩いている」
という場合は、身体が何らかの支えを求めている可能性があります。
そのような場合には、本人の動作を確認したうえで手すりなどの環境整備を検討するとよいでしょう。
手すりを設置するときの注意点
高さ
利用者本人が自然に手を伸ばしたときに握りやすい高さを検討します。
身長だけで決めるのではなく、実際の歩行姿勢や身体状況を確認することが重要です。
太さ
手すりは握りやすい太さを選ぶ必要があります。
握力が弱い方の場合、太すぎる手すりは握りにくくなることがあります。
素材
木製や樹脂製などさまざまな素材があります。
汗をかいたときや冬場など、季節によって握りやすさが変わることもあります。
設置位置
手すりは「本人が必要とする場所」に設置することが重要です。
例えば廊下の途中で方向転換する場所や、トイレの出入口など、特に不安定になる場所を確認しましょう。
廊下だけではなく「生活動線」で考える
住宅改修を行う際に非常に重要なのが、廊下だけを切り取って考えないことです。
例えば、
寝室 → 廊下 → トイレ
という動線を毎晩利用している方であれば、
- ベッドからの立ち上がり
- ベッド周辺の照明
- 廊下の明るさ
- 廊下の段差
- 手すり
- トイレ入口
- トイレ内の手すり
まで一連の流れとして確認する必要があります。
廊下に手すりを設置しても、寝室から廊下へ出るところで転倒してしまえば十分な対策とはいえません。
住宅改修では、
「その場所が安全か」ではなく「その人が生活する一連の動作が安全か」
という視点が重要です。
実際の住環境では意外な場所が危険になることも
私自身、住環境を確認する際には、実際に本人が普段どのように移動しているのかを見ることを大切にしています。
一見すると問題のない廊下でも、
「ここで壁に手をついている」
「この角を曲がるときに身体がふらつく」
「夜間だけ足元が見えにくい」
といった問題が見つかることがあります。
こうした問題は、住宅の写真や間取りだけでは分からないこともあります。
だからこそ、実際の生活動作を確認しながら環境を整えることが大切です。

介護保険で廊下の手すりや段差解消はできる?
要支援・要介護の認定を受けている方は、一定の条件を満たすことで介護保険の住宅改修費を利用できる場合があります。
住宅改修では、
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑りにくい床材への変更
などが対象となる場合があります。
ただし、すべての工事が対象になるわけではありません。
また、介護保険を利用して住宅改修を行う場合には、原則として工事前の申請が必要です。
先に工事を始めてしまうと、介護保険の対象にならない可能性があるため注意しましょう。
詳しい申請方法については、以下の記事も参考にしてください。
介護保険で手すりを設置するには?申請方法・費用・補助金を分かりやすく解説
住宅改修の対象となる工事についてはこちら。
廊下の転倒予防チェックリスト
最後に、自宅の廊下をチェックしてみましょう。
- 廊下に物が置かれていない
- 床にコードが出ていない
- マットがめくれていない
- 小さな段差がない
- 部屋の出入口につまずきやすい場所がない
- 夜間でも十分な明るさがある
- 人感センサーライトなどを活用している
- 歩行時に壁や家具につかまっていない
- 手すりを必要としていないか確認している
- 廊下の幅が十分確保されている
- 曲がり角で身体がふらついていない
- 寝室からトイレまで安全に移動できる
一つでも気になるところがあれば、転倒予防のために住環境を見直してみましょう。
まとめ
高齢者の廊下での転倒を防ぐためには、手すりを設置するだけではなく、段差、床、照明、家具、生活動線などを総合的に確認することが重要です。
特に夜間のトイレへの移動など、普段の生活の中で繰り返し利用する動線については、転倒リスクを重点的に確認しましょう。
また、歩行が不安定な方の場合は、廊下の手すりや福祉用具だけでなく、家具の配置変更や寝室の位置を変更するなど、生活そのものを見直すことで安全性を高められる場合があります。
介護保険を利用できる場合には、住宅改修費の支給を受けられる可能性もあります。
ただし、住宅改修を行う場合は工事前の申請が重要です。
「転倒してから直す」のではなく、「転倒する前に危険を見つける」。
この視点を持って、一人ひとりの身体状況と生活スタイルに合った住環境を整えていきましょう。



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